- 胸にしこりを触れたら…放置せずに確認を
- 胸のしこりの自己チェック方法
- 胸のしこりの良性と悪性の特徴
- 年代別の胸のしこりと原因
- 胸のしこりで考えられる疾患
- 胸のしこりの特徴から考えられる病気の可能性
- よくある質問
胸にしこりを触れたら…放置せずに確認を
しこりとは、皮膚や皮下組織にできる腫瘤のことです。良性のものも悪性のものもあります。
左右同じ位置にあるしこりは、乳腺の一部である可能性が高いため、数週間後に再び触ってチェックしてみましょう。良性のしこりは、比較的やわらかく弾力があり、コロコロと動くことが多いです。
一方、乳がんのしこりは、硬くて境界がわかりにくく、あまり動かないことが多いです。
しこりを触れたら、自己判断せずに、病院を受診してください。
胸のしこりの自己チェック方法
乳がんは自分で気付くことができるがんの一つです。早期発見のために、月に1度はセルフチェックを行うことをお勧めします。
月経前には乳房が張りやすくなるため、セルフチェックは月経終了後から4~5日後にしましょう。閉経後など月経のない方は、毎月同じ日に行うようにしましょう。
胸のしこりの良性と悪性の特徴
乳がんのしこりの特徴(注意が必要なしこり)
下記の症状に当てはまる場合は、乳がんの可能性があるため、病院を受診しましょう。
- 硬い・ゴツゴツしている
- 境界がわかりにくい
- 動きにくい・乳腺や皮膚に癒着している
- しこりが徐々に大きくなっている
- 痛みがない(痛みがあることもあるがまれ)
良性のしこりの特徴(線維腺腫・嚢胞など)
下記の症状に当てはまる場合は、良性の可能性が高いですが、自己判断せずに検査を受けましょう。
- 柔らかい・弾力がある
- 境界がはっきりしている
- 押すとよく動く(可動性がある)
- 触ると痛みを伴うことがある(痛くないこともある)
年代別の胸のしこりと原因
20代~30代の胸のしこり
20代~30代の方は、乳腺が厚いため、正常な乳腺の一部をしこりのように触れることがあります。
実際、検査により、しこり(腫瘍)が見つかる場合でも、嚢胞や線維腺腫などの良性腫瘍であることが多いです。しかしながら、40歳未満で乳がんを発症する方もいらっしゃいます。
「しこりかも?」と思った際は、当クリニックにご相談ください。
40代~の胸のしこり
40代以上で胸にしこりを自覚した場合、病院で検査を受けることが望まれます。
統計的には乳がんは40代から発症が増加することが知られています。マンモグラフィと乳腺エコー検査を組み合わせて詳しく検査を行い、しこりが見つかった場合は、良性なのか悪性なのかを判断する必要があります。
胸のしこりで考えられる疾患
線維腺腫
線維腺腫とは、10代以降で見られる良性腫瘍です。しこりはコロコロとよく動く特徴があります。線維腺腫と診断された場合、ほとんどの場合、特別な治療は不要ですが、急速に大きくなる場合は摘出することも検討されます。
乳腺嚢胞
乳腺嚢胞は、乳腺内にできる袋状の構造物です。内部に液状の内容物が入っていることが多いです。30~50代の女性に多く見られ、ホルモンバランスの変化が関与していると考えられています。しこりとして触れることがありますが、嚢胞と診断された場合、特別な治療は不要です。
乳腺炎
乳腺炎は、乳汁のうっ滞や細菌感染により乳房に炎症が起こる疾患です。赤み、腫れ、痛み、しこりなどの症状が現れ、特に授乳期には「うっ滞性乳腺炎」が多くみられます。細菌感染が進むと「乳腺膿瘍(膿のたまり)」を形成し、切開排膿が必要になることもあります。授乳期以外にも「乳輪下膿瘍」や「肉芽腫性乳腺炎」などの乳腺炎を発症することがあります。
胸のしこりの特徴から考えられる病気の可能性
しこりの特徴 | 考えられる疾患 | 主な特徴・症状 |
硬くて動かないしこり | 乳がん | ・表面がデコボコしていることが多い ・痛みはほとんどない ・進行すると皮膚のひきつれや陥没が見られる |
---|---|---|
弾力がありよく動くしこり | 線維腺腫 | ・比較的若い世代(10~30代)に多い ・大きくなることがある |
柔らかくわかりにくいしこり 左右両方に同じようなしこり |
乳腺症 | ・40~50代に多い ・ホルモンの影響で、乳腺をしこりのように触れる ・痛みを伴うことがある ・月経周期によって大きさが変わることがある |
急に大きくなるしこり | 葉状腫瘍 | ・短期間で大きくなることがある ・良性のことが多いが、一部悪性のものもある |
押すと痛むしこり | 乳腺炎・乳腺膿瘍 | ・授乳中の女性に多いが、授乳期以外でも発症する ・痛み、腫れ、赤みを伴い、発熱することもある |
乳頭からの分泌を伴うしこり | 乳管内乳頭腫・乳がん | ・透明・黄色の分泌物は問題のないことが多い ・茶色、赤色の分泌物は乳管内にできものができている可能性がある |
しこりの特徴だけでは良性・悪性を判断することはできません。自己判断せず、気になる症状があれば病院を受診することをお勧めします。
よくある質問
胸のしこりは痛みがあると乳がんではない?
乳がんは多くの場合、痛みを伴わないしこりとして現れます。しかし、まれに痛みを感じる場合もあるため、「痛くない=乳がんではない」とは言い切れません。
乳がん検診で異常なしでも胸のしこりを触れることがありますか?
乳がん検診では、マンモグラフィやエコー検査でしこりの有無を調べますが、検査時点で異常がなくても、その後、しこりが発生することがあります。
特に40歳以上の方は、定期的に乳がん検診を受けつつ、日頃からセルフチェック(ブレストアウェアネス)を行い、異常を感じたら早めに受診しましょう。
生理前に胸にしこりができるのは異常ですか?
生理前になるとホルモンの影響で乳腺が張り、しこりのように感じることがあります。
周期的に症状が変化し、生理後には症状が落ち着くことが多く、このような症状は心配入りません。ただし、生理が終わっても硬いしこりが残る場合や、しこりが大きくなる場合は、乳がんや他の乳腺疾患の可能性もあるため、病院を受診することをお勧めします。
胸のしこりが大きくなった場合はどうすればいいですか?
しこりが急に大きくなる場合、線維腺腫や葉状腫瘍、乳がんの可能性があります。病院を受診し、精密検査を受けることをお勧めします。
授乳中に胸のしこりを触れるのは異常ですか?
授乳中は乳腺が発達し、しこりのように触れることがあります。
乳がんのしこりは小さいうちに見つけられますか?
乳がんのごく初期段階はしこりが小さく、自己触診では発見しづらいため、マンモグラフィや超音波検査を受けることが大切です。
これらの検査により、早期発見・早期治療が可能となります。定期的にな乳がん検診を受けましょう。
胸のしこりを予防する方法はありますか?
乳がんの発症を完全に防ぐことはできませんが、適度な運動やバランスの取れた食生活、禁煙・節酒、適正体重の維持などがリスクを下げるといわれています。また、ブレストアウェアネス(乳房のセルフチェック習慣)を実践し、定期的に乳がん検診を受けることで、早期発見・早期治療につなげることができます。
胸のしこりが消えることはありますか?
ホルモンの影響による「乳腺症」や、一部の良性のしこり(「線維腺腫」「乳腺嚢胞」など)は時間の経過とともに小さくなったり、消えたりすることがあります。一方で、乳がんのしこりは自然に消えることはありません。
胸に突然大きなしこりができて痛いです。何かの病気でしょうか?
急に大きくなったしこりで痛みがある場合、以下のような病気の可能性があります。
症状の特徴 | 考えられる疾患 |
急にできたしこり+痛み+赤み 乳房の腫れ+痛み+発熱 |
乳腺炎・乳腺膿瘍 |
---|---|
急激に大きくなるしこり 痛みは強くない |
葉状腫瘍 |
特に「急激に大きくなる」「強い痛みが続く」「皮膚が赤く腫れる」「熱を持っている」といった場合は、乳腺外科を早めに受診してください。