乳管の異常
乳房には、乳汁を乳頭まで運ぶための「乳管」という細い管が張り巡らされています。この乳管に異常が生じると、乳頭からの分泌物やしこり、痛みなどの症状が現れることがあります。特に、乳管内乳頭腫と乳管拡張症は、乳管の異常に関連する代表的な疾患であり、どちらも乳頭分泌を引き起こすことが多いのが特徴です。
乳管内乳頭腫
「乳管内乳頭腫」は、乳管内に発生する良性腫瘍です。30代後半~50代が好発年齢です。主な症状は、乳頭からの分泌やしこりです。
一般的には経過観察となることが多いです。
乳管拡張症
乳管が拡張する良性疾患です。一般的に症状はありません。主に中年以降の女性にみられ、乳がん検診などをきっかけに発見されるケースが多いです。
症状がなく、腫瘍の存在が否定されれば、治療の必要はありません。
乳管内乳頭腫・乳管拡張症の症状
乳管内乳頭腫
代表的な症状として、(順番入れ替え)乳頭分泌(透明、黄色、茶色、褐色、赤色など)やしこりが挙げられます。
乳管拡張症
一般的に症状は特にありません。しかし、例えば乳管に腫瘍がある場合には、乳頭から分泌物が出たり、しこりを触れたりすることがあります。また、炎症が起きている場合には、乳房が腫れたり、熱感や痛みを伴ったりすることがあります。
乳管内乳頭腫・乳管拡張症の原因
乳管内乳頭腫
現時点では、乳管内乳頭腫が発生するはっきりとした原因は不明です。中年以降の女性に頻繁に見られることから、年齢と共に乳管周囲の組織が変化したことによる、乳腺の老化現象として生じているのではないかと考えられています。
乳管拡張症
原因ははっきりしていません。
喫煙は乳管拡張症と関連し、喫煙により膿瘍などのリスクが上がることが報告されています。
乳管内乳頭腫・乳管拡張症の検査
視触診、マンモグラフィー、超音波検査、MRI検査などを行い、必要に応じて、細胞診や針生検などの検査を行います。
乳管内乳頭腫・乳管拡張症の治療
乳管内乳頭腫
経過観察を行う場合と手術を行う場合があります。
乳管拡張症
症状がなく、腫瘍の存在が否定された場合は、半年から1年に1回の頻度で、超音波検査による経過観察を行います。
受診の目安
以下のような症状が見られる場合は、病院を受診しましょう。
- 乳頭からの分泌(茶色、ピンク色、赤色)
- 乳輪下または乳頭付近のしこり
- 乳頭の変形や陥没
よくある質問
乳頭から分泌物が出ます。乳管内乳頭腫でしょうか?
乳頭からの分泌物は、乳管内乳頭腫の代表的な症状の一つですが、他の病気の可能性も考えられます。特に、血性の分泌物の場合は、乳がんとの鑑別が必要になります。自己判断せずに、医師の診察を受けましょう。
乳管拡張症と診断されました。治療は必要ですか?
無症状の場合は経過観察となります。
乳管内乳頭腫は悪性化しますか?
乳管内乳頭腫は、良性の腫瘍ですが、まれに悪性化したり、乳管内乳頭腫の近傍から乳がんが発生するリスクがあります。
乳管内乳頭腫や乳管拡張症は、放置しても大丈夫ですか?
医師に相談してください。
乳管内乳頭腫や乳管拡張症の手術は、入院が必要ですか?
日帰り手術で対応できる場合もあれば、数日の入院が必要になる場合もあります。
乳管内乳頭腫や乳管拡張症は、乳がんのリスクを高めますか?
乳管内乳頭腫は、その近傍から乳がんが発生するリスクがあるとされていますが、乳がんのリスクを高めるわけではありません。