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乳腺炎・乳輪下膿瘍・肉芽腫性乳腺炎

乳房に炎症が起こる病気

乳腺炎乳腺炎には授乳期に起こるものと非授乳期に起こるものがあります。
授乳期に起こる乳腺炎には「うっ滞性乳腺炎」と「化膿性乳腺炎」があります。
非授乳期に起こる乳腺炎には「乳輪下膿瘍」と「肉芽腫性乳腺炎」があります。

授乳期に起こる乳腺炎

うっ滞性乳腺炎

「うっ滞性乳腺炎」は母乳の流れが悪くなることで起こる非細菌性の乳腺炎です。

化膿性乳腺炎

「化膿性乳腺炎」はうっ滞性乳腺炎に細菌感染が併発している乳腺炎です。化膿性乳腺炎が悪化すると、膿が溜まった状態になり、これを「膿瘍」と言います。

非授乳期に起こる乳腺炎

乳輪下膿瘍

「乳輪下膿瘍」は、乳輪下または乳輪近傍の皮下にできる炎症です。20-30歳代に好発し、陥没乳頭の方で起こることが多いです。陥没乳頭の他、喫煙、肥満、糖尿病が発症のリスク因子とされています。

肉芽腫性乳腺炎

「肉芽腫性乳腺炎」は、原因不明のまれな良性の炎症性疾患です。出産歴のある女性で、妊娠5年以内に発症することが多いのが特徴です。

乳腺炎の症状

乳腺炎の主な症状としては、以下を挙げることができます。

  • 患部の痛み、圧痛
  • 乳房の熱感や発赤
  • 乳房のしこり
  • 乳房の張り感や腫脹
  • 発熱や全身のだるさ

乳輪下膿瘍の症状

  • 乳輪下の限局した痛みを伴うしこり

  • 乳輪部皮膚の発赤や熱感

肉芽腫性乳腺炎の症状

  • 境界のわかりにくい硬いしこり

  • 乳房皮膚の発赤

  • 乳房の痛みや熱感(痛みがみられないこともある)

  • 全身症状(結節性紅斑、関節炎など)を伴うことがある

乳腺炎・乳輪下膿瘍・肉芽腫性乳腺炎の原因

うっ滞性乳腺炎

乳汁のうっ滞が原因で起こる炎症です。乳汁うっ滞の原因としては、乳管が十分に広がっていない、赤ちゃんが母乳を吸う力が不足している、授乳の間隔が長すぎるなどがあります。

化膿性乳腺炎

うっ滞性乳腺炎をベースに細菌感染したものがほとんどですが、乳頭部の傷から細菌が入り込んで炎症を引き起こすこともあります。授乳中でなくても起こる可能性があります。

乳輪下膿瘍

陥没乳頭内に汚れなどがたまって乳管が閉塞し、そこに細菌感染が合併して発症します。
陥没乳頭、喫煙、肥満、糖尿病が発症のリスク因子とされています。

肉芽腫性乳腺炎

原因は不明とされています。

乳腺炎・乳輪下膿瘍・肉芽腫性乳腺炎の治療

乳腺炎

乳腺炎の治療は、症状の程度や原因によって異なります。
軽症の場合は、乳房マッサージ、搾乳で乳汁分泌を促すことが第一選択になります。
痛みを和らげるために、患部を冷却したり、鎮痛薬を投与することも有効です。腫脹・発赤を伴う場合や細菌感染が明らかな場合は、抗菌薬の投与を内服または点滴で行います。原因菌の種類によって適切な抗菌薬を選択します。
膿瘍を形成している場合は、外科的治療が必要となります。局所麻酔を行い、皮膚を切開して、たまっている膿を排出します。膿の量が多い場合や、膿瘍が大きい場合には、ドレーン(管)を留置して持続的に排膿することがあります。

乳輪下膿瘍

まずは抗菌薬投与で、保存的に治療します。改善しない場合は、切開排膿を行います。いったん症状が改善しても、頻回に再発を繰り返す場合、または症状がなかなか改善しない場合は、炎症が落ち着いてから、広く膿瘍腔を切除することも考慮します。

肉芽腫性乳腺炎

自然治癒することもあり、経過観察が第一選択となります。感染や膿瘍形成を認める場合は、抗菌剤投与とドレナージによる治療を行います。難治性の場合は、ステロイドを投与します。

うっ滞乳腺炎の予防と対策

適度な間隔を設けて授乳する

授乳の間隔が3時間以上開くと乳汁が滞り、乳腺炎のリスクが上昇します。前回の授乳から3時間以内を基準に、こまめに授乳するよう心がけましょう。

授乳中の姿勢を見直す

横抱きや縦抱きなど抱き方を変えたり、同じ抱き方でも角度を調節したりして、飲み残しを防ぎましょう。そうすることで、乳房全体の母乳がまんべんなく飲んでもらえるようになります。

乳頭をお手入れする

乳頭にひび割れや損傷が生じると、細菌が侵入し感染のリスクが高まります。授乳後には、乳頭を清潔にして、適切な保湿を行いましょう。

授乳前のマッサージ

授乳を始める前に、乳房を優しくマッサージすると血行が改善され、母乳の分泌が促進されます。さらに、温かい湿布を使って乳房を温めると、乳腺の詰まりが予防できるため、乳腺炎の予防にも期待できます。

締め付けがきつくない服装・ブラジャーを身に着ける

適切な衣類やブラを選ぶことは、授乳中において非常に重要です。授乳ブラは、程良くサポート性のあるもので、かつ通気性の良い素材が使用されているものを選ぶと良いでしょう。

十分な休息をとる

ストレスや疲労、睡眠不足は血行の悪化を招き、乳腺炎のリスクを高めます。家族など周囲からのサポートを受けながら、休息をとるようにしましょう。

栄養バランスの整った食事

特定の食品が乳腺炎の原因となるわけではありません。食事量には気を付け、栄養バランスを保つよう努めましょう。

乳頭を清潔に保つ

赤ちゃんの噛み傷から細菌が感染するのを防ぐ対策として、授乳前には手指をしっかり洗いましょう。授乳後には乳頭もきちんと拭きましょう。

受診の目安

以下の症状が現れた場合は、病院を受診してください。

    受診の目安
  • 痛みがひどくて治らない
  • 発熱(悪寒や震え、または38℃以上の発熱)
  • 乳房が赤く腫れている
  • 腋の下にあるリンパ節が痛い
  • 痛くて授乳できない
  • 乳腺炎が再発した

よくある質問

授乳中に乳腺炎になったら、授乳をやめるべきですか?

いいえ、授乳を続けることが推奨されます。授乳によって乳汁のうっ滞を防ぎ、乳腺炎の改善を促します。

乳腺炎を放置するとどうなりますか?

乳腺炎を放置すると、症状が悪化し、乳腺膿瘍を引き起こす可能性があります。乳腺膿瘍になると、切開排膿が必要になる場合もあります。

乳腺膿瘍の治療は痛いですか?

乳腺膿瘍の切開排膿は、局所麻酔を行うため、痛みを最小限に抑えられます。術後は、鎮痛薬を服用することで痛みをコントロールできます。

 乳腺炎と乳がんの違いは何ですか?

乳腺炎は、乳腺の炎症であり、乳房の腫れや痛み、発熱などを伴います。一方、乳がんは、乳腺組織に発生する悪性腫瘍であり、初期には自覚症状がないことが多いです。乳腺炎と乳がんの症状は似ている場合があるため、自己判断せずに専門医を受診することが大切です。

 乳腺炎は再発しやすいですか?

乳腺炎は、原因によっては再発することがあります。再発予防のためには、適切な乳房ケアや生活習慣に注意することが大切です。

乳腺炎の時に市販の痛み止めを飲んでも良いですか?

市販の痛み止めで症状が緩和することはできますが、根本的な治療にはなりません。症状が改善しない場合は、病院を受診しましょう。

乳腺炎になった場合、何科を受診すれば良いですか?

産後間もない場合は、まずは産婦人科に相談してください。
出産から間が空いて症状がある場合は、産婦人科や乳腺外科に相談してください。
外科、産婦人科などで診察・治療を受けることができます。